売買契約後に相続が発生した場合の「空き家特例」「マイホーム特例」適用の可否と注意点を徹底解説

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はじめに

不動産の売買契約締結後、引渡し前に相続が発生した場合、譲渡所得に関する特例の適用可否が複雑になります。この記事では、「空き家特例」と「マイホーム特例」のどちらが適用可能か、状況別に整理し、選択時のメリット・デメリットや注意点を解説します。

◆要点まとめ

①耐震基準を満たす家屋である場合
→空き家特例及びマイホーム特例のいずれか選択可
②相続開始前に家屋を取り壊している場合
→空き家特例適用不可、マイホーム特例適用可
③相続開始時に家屋が存在している場合
→空き家特例及びマイホーム特例のいずれか選択可

ケース①耐震基準を満たす家屋である場合
→このケースでは、相続人が「空き家特例」または「マイホーム特例」のいずれかを選択できます。

【空き家特例の適用について】
本ケースで空き家特例を適用する場合、引渡日基準を選択することになります。譲渡税の申告をする際に、「譲渡の日」をいつとするかは売買契約締結日(契約日基準)または引渡日(引渡日基準)のいずれかを選択して申告することが認められています。そのため、契約日基準では特例適用が認められる期間内でなくても引渡日基準が適用期間内であれば、引渡日基準を選択することで適用要件を満たすことができます。

【マイホーム特例の適用について】
契約日基準を譲渡の日とする場合、被相続人が存命中に売却したとみなされるため、被相続人のマイホーム特例(居住用財産の3,000万円控除)を適用できます。また、被相続人の所有期間等によっては軽減税率の特例の適用も受けることができます。本特例を適用する場合には相続人により準確定申告を行うことになります。

【比較:空き家特例 vs マイホーム特例】

特例 メリット デメリット
空き家特例 ・要件を満たす相続人全員が適用を受けられる(節税効果が高くなる可能性あり)

・適用要件や手続きが複雑
・相続人が同年に自宅を売却する場合は自身の受けられるマイホーム特例と合算して控除額上限3000万円となる。

マイホーム特例 ・譲渡税が発生する場合には相続税申告において債務控除が受けられる ・相続人数等によっては空き家特例に比べて節税効果が低い場合がある

なお、契約日基準を選択した場合、仲介手数料等の経費は実際の支払日に関係なく、経費として申告することができます。

ケース②相続開始前に家屋を取り壊している場合
→このケースでは空き家特例の適用は認められず、マイホーム特例のみ選択可能となります。

【空き家特例の適用について】
空き家特例適用要件において、相続人は被相続人から土地及び家屋のどちらも相続しなければならない定めがありますので、既に家屋が取り壊されているということは家屋を相続することができませんので、空き家特例の適用は認められないものとなります。

【マイホーム特例の適用について】
ケース①と同様に、契約日基準を譲渡の日とする場合、マイホーム特例(所有期間によっては軽減税率の特例も併用可)を適用できます。ただし、マイホーム特例適用要件において、家屋を取り壊した日から1年以内に売買契約を締結すること及び居住の用に供さなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日まで(お住まいにならなくなってから4回大晦日をまたぐまで)に引き渡しを行うという定めがありますので、ご注意ください。

ケース③相続開始時に家屋が存在している場合
→このケースでは、相続人が「空き家特例」または「マイホーム特例」のいずれかを選択できます。

【空き家特例の適用について】
ケース①と同様に、引渡日基準を選択することにより空き家特例の適用が認められます。なお、現行の制度では引渡し後の翌年2月15日までに家屋を取り壊す必要があります。

【マイホーム特例の適用について】
こちらもケース①と同様に、契約日基準を譲渡の日とする場合、マイホーム特例(所有期間によっては軽減税率の特例も併用可)を適用できます。

まとめ

売買契約後に相続が発生した場合、譲渡所得の特例適用には慎重な判断が求められます。空き家特例とマイホーム特例の選択は、各特例の適用可否、節税効果の比較など多角的に検討する必要があります。専門家への相談を通じて、最適な選択をすることが重要です。