空き家特例特有の売買契約書における特約文言
空き家特例適用において、以前は譲渡の時までに家屋を耐震改修すること又は除却することが要件の一つでしたが、令和5年度税制改正において、令和6年1月1日以降の譲渡については、譲渡の時から譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに家屋の耐震改修又は除却工事を行った場合にも空き家特例の適用が認められることとなりました。
これにより、実務においては譲渡後に買主の責任と負担により工事を実施するケースが増えており、特に譲渡後買主にて建物を除却するケースが多くなっております。
本記事では、譲渡後に買主が建物除却工事を行う場合の売買契約書に記載すべき特約文言についてご紹介します。
なお、空き家特例の制度全般について解説を行っている記事がありますので、そちらも併せてご覧くださいませ。
https://tomorrowstax.com/knowledge/202107189172/
1.空き家特例特有の売買契約書における特約文言(譲渡後に除却工事を行う場合)
1.売主及び買主は、売主が本契約について租税特別措置法(昭和32年法律第26号)第35条 第3項に定める空き家の譲渡所得の特別控除(以下「特別控除」という。)の適用を受けることを前提として、本契約の売買価格等諸条件を決定したことを互いに確認します。
2.売主及び買主は、本件土地及び建物の所有権移転後に買主が本件建物の全部の取壊し又は除却工事(以下「本工事」という。)を行うことに合意し、本工事については買主の責任と負担において、令和〇年〇月〇日までに完了させることとします。 なお、買主は、売主が本契約について特別控除の適用を受けるために必要となる書類(以下「必要書類」という。)を取得のうえ、令和〇年〇月〇日までに売主へ交付するものとします。
3.前項のとおり買主が本工事を完了できない又は売主へ必要書類の交付をしないことにより、売主が特別控除を受けることができなかった場合、売主は買主に対し、特別控除を受けることによって本来得られた税控除額相当額の損害賠償を買主に請求することができることとします。 ただし、買主の責めに帰することができない事由により買主が義務を履行できなかった場合は、買主は責任を負わないものとします。
※引用元「国土交通省HP」
2.解説
空き家特例が適用できるか否かについては、売主様にとって税支出が大きく変わる重要なポイントになります。不動産売買において、当該特例をミスなく適用出来るよう、販売活動開始前に不動産仲介会社に伝えておくことは勿論のこと、売買契約書においても前述のように特約欄等に明記しておくと安心です。
なお、売買契約書に明記していなくても、それだけを理由に空き家特例の適用が不可になるものではないですが、空き家特例適用時に税務署に提出する必要がある「被相続人居住用家屋等確認書」を役所から取得する際に、譲渡の時から翌年2月15日までに家屋を除却等することが約したことが分かる書類の提出を求められることがあります。また、買主との不要なトラブルを避ける意味でも、やはり売買契約書に前述のような文言を記載しておいた方が良いでしょう。
3.最後に
実務において、空き家特例適用におけるミスリードを見かけるケースは少なくありません。不動産仲介会社の担当者が全て空き家特例に詳しい訳ではなく、当該特例の存在すら把握していない担当者もいるほどです。
空き家特例については、本記事で取りあげたこと以外にも、注意点が多くありますので、ご自身の不動産が空き家特例適用が認められるのかどうか、お悩みの際にはお気軽に当社までご相談くださいませ。