取得方法による空き家特例の適用可否について解説
本記事では相続した(またはこれから相続する)不動産を売却する際の空き家特例適用において、取得方法毎における適用可否について解説します。
特にご質問等の多い以下4点について解説していきます。
1.特定遺贈により取得した場合は適用不可
2.遺産分割協議のやり直しにより取得した場合は原則適用不可
3.包括遺贈により取得した場合は適用可
4.代襲相続により取得した場合は適用可
上記2以外は相続人の方でどうにか出来る問題ではないことも考えられますが、ご自身が空き家特例の適用を受けられるかどうかを把握することで、ご売却計画も変わってくることと思います。
なお、空き家特例の制度全般について解説を行っている記事がありますので、そちらも併せてご覧くださいませ。
https://tomorrowstax.com/knowledge/202107189172/
また、本記事において論点としている事項以外は全て空き家特例の適用要件を満たしているものとします。
1.特定遺贈により取得した場合は適用不可
特定遺贈により相続人以外の人が空き家を相続した場合は空き家特例の適用は認められません。
(相続人が特定遺贈により空き家を相続した場合は適用可となります。)
■相続人の定義
租税特別措置法第35条3では空き家特例の適用について「~被相続人居住用家屋及び被相続人居住用家屋の敷地等の取得をした相続人(包括受遺者を含む~)」と定められています。
ここでいう相続人とは、法定相続人のうち、実際に遺産を相続した人であり、相続放棄した人は含まれません。
■特定遺贈とは
遺言によって遺産を具体的に指定して、特定の人に遺贈する方法です。例えば「●●市●●の土地を○○に遺贈する」といったような内容です。なお、当該財産に関して債務(ローン残債等)がある場合には、その債務も特定の人に引き継ぐ旨を指定しないと、債務のみ法定相続分に従って相続人に継承されることになりますので注意が必要です。
2.遺産分割協議のやり直しにより取得した場合は原則適用不可
■遺産分割協議のやり直し
相続人全員が同意していれば、遺産分割協議のやり直しは可能とされています。このやり直しによって新たに財産を取得した者は、最初の遺産分割協議で財産を取得した者から当該財産を取得したのであって、被相続人から取得したことにはならないため、空き家特例の適用は原則認められていません。
但し、最初の遺産分割協議が無効や取り消しによりやり直しとなった場合には、特例の適用が認められる可能性が高いと考えます。
なお、遺産分割協議をやり直した場合の課税関係を以下記事にて分かりやすく解説してますので、気になる方は是非ご覧くださいませ。
https://tomorrowstax.com/knowledge/2022020710034/
3.包括遺贈により取得した場合は適用可
■包括遺贈とは
包括遺贈とは、遺言において「遺産の全て」や「遺産の○%」といったように、財産の内容を特定せずに割合を指定して遺贈する方法を言います。これは定められた割合で債務も継承します。
その包括遺贈により遺産を相続した人を包括受遺者と言います。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持つことになり、空き家特例の適用も認められています。
遺言状の表現方法によっては、特定遺贈なのか包括遺贈なのか判断が難しい場合が少なくありません。そのような場合には行政書士や司法書士等の専門家に確認してもらうようにしましょう。
4.代襲相続により取得した場合は適用可
■代襲相続とは
代襲相続とは、本来相続人となるはずだった人が相続開始前に亡くなってしまっている場合等により、その子どもや孫が相続することを言います。
例えば、昨年に父が亡くなって相続発生。相続人は長男一人なのだが、その長男は父が亡くなる前に亡くなっていた。長男には一人息子がいたという場合に、長男の一人息子、つまり被相続人の父から見たら孫が相続するようなケースです。
このように代襲相続した者は相続人とみなされますので、空き家の特例適用も認められます。
なお、上記ケースで、長男がまだ生存していた場合に、長男の一人息子に特定遺贈した場合は空き家特例は認められません。(本記事1の通り)
5.まとめ
どのような方法で相続したかによって、空き家特例の適用可否が変わってくることを解説いたしました。
特に遺言の内容によって、特例の適用に大きな影響を及ぼすことがお分かり頂けたかと存じます。既に相続が発生している方はご自身が空き家特例の適用が認められるかどうかの参考にして頂けますと幸いですし、これから相続を見据えてる方は遺言の内容はきちんと整理しておく必要がございます。
相続に関することで何かお困りのこと等ございましたらお気軽にご連絡くださいませ。
何卒よろしくお願いいたします。