空き家特例において一次相続が未分割で二次相続が発生した場合

本記事では相続した不動産の空き家特例適用について、一次相続が未分割の状態で二次相続が発生してしまった場合について解説します。

この場合、二次相続発生時に相続人が複数人いるかどうか、遺産分割協議をどのような内容にするか等によって、適用可否等が変わってきます。

本記事では分かりやすく以下2パターンを想定して解説していきます。

なお、対象不動産の家屋及び敷地とも父が所有しており、一次相続時も二次相続時にも遺言はなく、一次相続発生後は母が一人で当該不動産に居住していたものとします。

【パターン①】

父が数年前に亡くなった(一次相続)

母が今年に亡くなった(二次相続)

相続人は子ども1人

 

【パターン②】

父が数年前に亡くなった(一次相続)

母が今年に亡くなった(二次相続)

相続人は子ども2人

 

【特にご注意するべき点】

1.パターン①の場合は二次相続の相続人(子ども1人)が法定相続分である1/2のみ空き家特例適用可能

2.パターン②の場合は遺産分割協議により一次相続において母が不動産の全てを相続したことにすることで、二次相続の相続人(子ども2人)が空き家特例を丸々適用することが可能

3.父から直接子ども2人が相続したことにしてしまうと、空き家特例は適用不可

 

なお、空き家特例の制度全般について解説を行っている記事がありますので、そちらも併せてご覧くださいませ。

https://tomorrowstax.com/knowledge/202107189172/

 

また、本記事において論点としている事項以外は全て空き家特例の適用要件を満たしているものとします。

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面談は何度でも無料ですので、ぜひ一度お問い合わせください。

1.二次相続の相続人が子ども1人だった場合の空き家特例適用における注意点

 冒頭で述べた通り、ここでは【パターン①】父が数年前に亡くなり(一次相続)、遺言もなく遺産分割協議も整わないままに母が今年に亡くなった(二次相続)、相続人は子ども1人という想定で解説いたします。

 

■二次相続の相続人である子どもは法定相続分である1/2について空き家の特例を適用できます。

→遺言や遺産分割協議が整っていない場合には、相続財産は相続人全員の共有に属すると民法で定められています。つまり、本ケースでは父が亡くなった一次相続においては、当該不動産の家屋及び敷地とも法定相続分に従い、持分は母1/2・子ども1/2に配分されることになります。そして母が亡くなった後に母の持分を子どもが全て取得することになります。

この場合、子どもが父から相続していた持分1/2は空き家特例は適用されず、二次相続開始の直前まで居住していた母から取得した持分1/2についてのみ空き家特例が適用されることとなります。

 

2.二次相続の相続人が子ども2人(または複数人)だった場合の空き家特例適用における注意点

ここでは【パターン②】父が数年前に亡くなり(一次相続)、遺言もなく遺産分割協議も整わないままに母が今年に亡くなった(二次相続)、相続人は子ども2人という想定で解説いたします。

 

■遺産分割協議の内容により、子ども2人とも自らの持分全てにおいて空き家特例の適用が可能です。

→上記1とは異なり、今度は二次相続の相続人が2人(または複数人)存在しており、一次相続に係る遺産分割を行う地位を承継する相続人が2人(複数)いることから、一次相続に係る遺産分割協議を行うことができることとなっています。この場合、父が亡くなった一次相続においては母が持分全てを取得し、母が亡くなった二次相続について子ども2人がそれぞれ相続することにすれば、子ども2人とも譲渡所得の全部において、空き家特例を適用出来ることになります。

 

3.父から子どもが直接取得したことにしてしまうと空き家特例は適用不可になる 

■相続登記をする際には必ず父→母→子どもの順番に登記することが必要

→これは現場でもよく見かけるミスです。空き家特例の適用に詳しくない司法書士の先生や、事情を詳しくお伝えしないままに登記を依頼すると、父から直接子どもに登記してしまうケースがあります。これでは二次相続開始直前に住んでいた母から相続したことにならないため、空き家特例適用要件がクリアできないことになってしまいます。注意しましょう。

 

4.まとめ

空き家特例の適用にあたっては、売却を開始する前段階から色々と気を付けておかなければならないことがあります。本記事では一次相続が未分割の場合の注意点について解説しました。それ以外にも多くの論点が存在する空き家特例ですが、適用時には税支出を大きく軽減できることもあります。出来れば遺産分割協議の段階から、空き家特例に詳しい専門家に相談することをお薦めします。